福島原子力発電所の視察

日本科学振興協会(JAAS)にて、
2024年4月2日~3日
住井英二郎 (JAAS理事(当時) 東北大学教授)・黒ラブ教授 (JAAS理事、東京工科大学客員准教授)が福島県観光物産交流協会、東京電力、環境省にご協力いただき企画運営して、JAAS関係者16名にて、福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所、中間貯蔵施設へ視察に伺いました。

はじめに

日本科学振興協会JAASのメンバーは、科学が好き、科学に関係する仕事をしているなど、科学につながっているメンバーがほとんどで、2011.3.11の東日本大震災、福島原子力発電所での事故をどう考えるのか、事故後の住民たちの避難や日々の生活の破壊、その後の復興のための汚染土の除去など、原子力という科学技術をどのように考えるのか、思う事は多岐にわたり、メディアを通じて深く胸に刻んでいると思います。
 福島第一原子力発電所の事故から13年が経過しましたが、現在も廃炉作業や復興活動が進められています。福島の街の様子と、原子力発電所の現状を直に見ることで、それぞれの活動に役立てるため、今回の視察を企画・実施しました。

視察内容
1日目
富岡駅→福島第二原子力発電所→いこいの村なみえ(宿泊施設)
2日目
いこいの村なみえ→東京電力廃炉資料館→福島第一原子力発電所→中間貯蔵施設→富岡町ガイドツアー→富岡駅

0日目

事前勉強会

2023年12月1日(金)に会員15名弱が集まり、経済産業省資源エネルギー庁、廃炉・汚染水・処理水対策官かつ廃炉・汚染水・処理水対策担当室現地事務所 参事官の木野正登さまをゲストに迎え、ご講演いただきました。(木野さまには視察にもご同行いただきました。)知識のアップデートを行い、視察に備えました。

1日目
福島第二原子力発電所4号機の格納容器ペデスタルへ

私達は、東京電力ホールディングス(以下、東電)のリスクコミュニケーターの案内のもと、福島第二原子力発電所の視察を行いました。バスで移動をしながら、1から4号機までの2011年の当時の被害状況など説明を受けました。2019年7月31日に廃炉措置が決定していて、原子炉本体周辺設備等の一部撤去が始まっていることがわかりました。様々なセキュリティチェックを受けながら、ほぼ暗闇の中、私達は4号機の格納容器、ペデスタル内部を視察に伺いました。第二原発は第一より広めに動きやすく作られているのにもかかわらずかなり複雑な通路で、凹凸があり油断すると頭をぶつけるくらいの所を歩き、ペデスタル内部に到着しました。技術的な説明を受け制御棒が稼働する装置類などを見て回りました。ペデスタル内部で、第1原発の廃炉作業をどのようにするのか説明を受けました。ペデスタル内部にたどり着くには、かなり周辺の装置などが複雑に設置されていて狭い通路を通るので、そこに入るロボットの開発の難しさ、燃料デブリを取り出す難しさを感じ取る事ができました。その後、会議室に戻り、技術的な質問や、人材育成の質問などディスカッションさせていただきました。

2日目
大勢の人が働く、事故機の廃炉が着実に進んでいる

私達は、東電の案内のもと、福島第一原子力発電所の視察を行いました。2011年の当時の被害状況など説明を受けました。セキュリティを何重にもパスをして、敷地内をバスで移動しました。放射線レベルは、発電所内で1.9 μSv/h、ALPS処理施設付近で2~5 μSv/h、などでした。最後には、1から4号機が見渡せる高台に伺いましたが、そこは74 μSv/hにも数値があがるところでした。
まさしく事故の原点、周辺には当時の事故の試行錯誤した配管なども整理されて錆びながらも置かれていたり、地下の土を凍らせて地下水を遮蔽する設備が稼働していたり、視察の全員が静かになり、それぞれ何かを感じていたようでした。

続いて5号機の燃料棒の保管の状況を視察しました。5号機は事故から免れ、原子炉建屋が吹き飛ばされていないので、本来の建屋内部の様子を知る事ができました。また原子炉の真上にも立ちました。また燃料棒が燃料プールにてチェレンコフ光で青白く光る様子も確認できました。多くの人が知識的に知ってはいるけど、本物のチェレンコフ光を見るのは初めてなので、静かに皆、見ていました。筆者としても原子力というものを直接感じた瞬間でした。

かなりたくさんの人が廃炉、福島の復興に向けて、複雑な現場で、1歩間違えれば事故が起こりやすい危険が伴いながらも、慎重に働いていることがわかりました。
この他、中間貯蔵施設を視察させていただきました。福島の除染に伴い発生した土壌や廃棄物等をどのように処理をするか。そのために土地買収から一時的に保管するまでの説明を受けました。実際の土壌貯蔵施設(埋められて高台になっている場所)に伺い、放射線の強さを測ったりしました(0.2~1.3 μSv/h)。

その後は、富岡町の当時から今の様子などを視察できる場所に移動したり、街を見る時間もとれました。この日は、ちょうど富岡町の夜の森桜まつりが開かれる1週間前で街に少し活気が戻る兆しがうかがえる時期でした。原子力という科学技術、発電、災害、事故、街、人々。様々な事を直接見ながら、考えた時間でした。最後に富岡町で新しくできたバームクーヘン屋でお買い物をさせていただきました。
視察後の報告会を2024年4月17日(水)に、JAAS内部向けに開催いたしました(参加者30名弱)。

視察にご協力いただいた東電の皆様、講演いただいた木野様、そして福島の皆様に深く感謝申し上げます。

              文:国立科学博物館認定サイエンスコミュニケーター
                                  湯沢友之

この記事を書いた人

日本科学振興協会(JAAS) 広報

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