人文社会系ユニット 「お金」にまつわるアンケート 結果のご報告

みなさまこんにちは!JAAS人文社会系ユニットです。

2024年9月に,人文社会系の研究者のみなさまを対象に,インターネット上において生活費と研究費に関する調査をお願いしたところ,55名の方からご回答をいただきました。ご協力いただいた皆様,本当にありがとうございました!

アンケートの結果をご報告いたします。

本アンケートは,「フェイスシート」「生活費セクション」「研究費セクション」から構成されておりました。アンケート項目はこちらからご確認いただけます。また,下記にご報告している集計結果については,こちら に掲載しています。適宜ご参照ください。

【ご回答くださった皆様の属性について】

  • 研究領域(複数回答可):科研費の中区分を参照し,複数回答可として項目を設定しました。設定したすべての領域からご回答をお寄せいただきました (Table 1)。
  • 年齢:35歳~49歳 (58.2%) を中心にご回答いただきました (Table 2)。
  • 居住地域:関東エリア (45.5%) を中心にご回答いただきました (Table 3)。
  • 性別:男性 = 70.4%, 女性 = 25.9%,その他・回答しない = 3.7%でした (Table 4)。
  • 扶養家族の有無:あり = 40%, なし = 56.4%でした (Table 5)。
  • 居住形態:同居かつ住居費用を負担している = 50.9%,同居かつ住居費用を負担していない = 18.2%,一人暮らしかつ住居費用を負担している = 25.5%でした (Table 6)。
  • 学位取得状況:人文社会系の博士学位を1つ以上取得している方 (69.1%) を中心にご回答いただきました (Table 7)。
  • 所属・属性 (複数回答あり) :大学・公的研究機関の研究・教育職の方を中心に回答を寄せいただきました (Table 8)。  

【生活費セクション】

  • 「現時点で,給与はいくらくらいが望ましいとお考えですか?」(社会保険料を含まない,一月あたりの手取り)
    • 半数程度 (50.9%) の方が,「45万円以上」とのご回答でした (Table 9)。
  • 「現在,ご自分の給与から毎月の生活費にどれくらい拠出していますか?」
    • 個人差の大きい項目でした。Table 10をご参照ください。

【フェイスシートと生活費のクロス集計】

  • 年齢層 (Table 11),居住地域 (Table 12),扶養家族の有無 (Table 13),居住形態 (Table 14) 別に,「望ましい給与」をクロス集計しました。
    • 居住地域や扶養家族の有無,住居費用の負担など,実際に捻出する生活費に応じて望ましい給与が変動するようすが見て取れます。

【研究費セクション】

  • 「年間の研究費として,総額はいくらくらいが望ましいですか?」に加え,費目ごと (設備備品・消耗品・国内旅費・外国旅費・人件費謝金・その他) に望ましい研究費をお聞きし,集計しました。
    • 全員分のデータ (N = 55) の集計 (Table 15) に加え,中心的な傾向を把握するため,ヒストグラム等を参照した上で,望ましい研究費の総額が1000万円以上の調査協力者 (N = 2) のデータを除外した集計結果 (N = 53) を報告しています (Table 16)。
    • 中心的な傾向としては,望ましい研究費の総額の平均は135万円 (SD = 100, min 40 – max 500) ,各費目がそれぞれ20-30万円程度でした。

【研究領域ごとの,望ましい研究費】

  • Table1に記載の研究領域ごとに,望ましい研究費 (総額 + 費目ごと) の平均値を算出し,Table17にまとめました。
    • 複数領域にチェックをしてくださった方については「複数領域」としてカテゴライズしています。
    • 赤いセルは,全体 (Total) の平均値より高い平均値となっている値です。各領域のNが少ないことには注意が必要ですが,各研究領域において,研究費が多くかかる費目が異なっている様相が見て取れます。

【まとめ】

  • 「望ましい給与」セクションでは,社会保険料を含まない手取りとして,「45万円以上」を望む方が多いという結果でした。過去に示された人文社会系の博士課程修了後の年収の低さ*1との乖離は非常に大きく,博士課程への進学や修了が,生活費という観点においては魅力的な選択肢とはなりにくいことを改めて示しています。キャリアパスの拡張を含めた出口戦略の見直しが急務であると考えられます。
  • 「望ましい研究費」では,中心的な傾向として,年間の研究費150万円程度が望まれていることが示されました。この数字は,概ね科研費の基盤Cや,挑戦的研究 (萌芽),若手研究,研究活動スタート支援などの研究費と対応しており*2,人文社会系分野においてはこのクラスの研究費の拡充が望まれることが示唆されます。ただし,今回得られた「望ましい研究費」が,これらの科研費において獲得可能な額に順応したものである可能性も否定できないでしょう。

最後に,本アンケートにご協力くださった皆さま,本当にありがとうございました。

本アンケートの結果が,人文社会系の研究環境改善やキャリアパス拡張の議論の一助となれば幸いです。

JAAS研究環境改善WG 人文社会系ユニット

*1 大学ジャーナルオンライン編集部,“食べていけない博士を量産、国内の博士人材追跡調査”. 大学ジャーナルオンライン. 2022-02, https://univ-journal.jp/141599/ (参照2024-08-06).

*2 日本学術振興会,”科学研究費助成事業 制度概要”. https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/01_seido/01_shumoku/index.html (参照 2025-2-25).

この記事を書いた人

日本科学振興協会(JAAS) 広報

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