東京都立雪谷高校での科学教室第1回

はじめに

こんにちは。第3期理事の宮原です。
2025年度が始まる少し前、雪谷高校の理科の先生からあるご相談をいただきました。「理科離れ」と言われる昨今ですが、生徒たちを見ていてそれを日々実感している為、なんとかしたい、ということでした。

理科の実験の時間も限られているし、受験の事も考えると延々と興味の赴くままに科学を楽しむ時間が取れないもどかしさをお感じだった先生やPTAの皆さんが、当時のPTA会長と知り合いだった宮原に相談してみようとなったそうです。

是非JAASでお役に立てればと会員に相談したところ、協力してくださる会員が何名かいましたので、2025年1年間引き受けてみることにしました。

企画概要

・趣旨:体験を通して、科学への興味関心を育み、理系科目の面白さに気づく時間を提供する
・開催頻度:約月1回
・実施場所:校内の理科室や近隣の施設
・講師:JAAS会員や協力いただける大学の先生/各回異なる講師にて実施
・内容:講師の専門かそれに近いところの内容で、かつ高校生が手を動かして楽しめる内容

第1回

<日時>2025年5月10日14時~16時
<タイトル>実験しない生物学? コンピュータを使った「計算生物学」入門

<講師>
冨樫 祐一 (JAASフェロー)
立命館大学 生命科学部 生命情報学科 教授
理化学研究所 生命機能科学研究センター 客員主管研究員

●略歴
1975 年生まれ。東京大学教養学部基礎科学科第一、同・大学院総合文化研究科広域科学専攻修了、博士(学術)。マックス・プランク協会 フリッツ・ハーバー研究所(ドイツ)、大阪大学、神戸大学、広島大学を経て、2021 年より立命館大学生命科学部生命情報学科教授。高校時代は新しいコンピュータの開発を目指していて、理科では化学と地学を選択したが、なぜか現在の専門である生物物理学・理論生物学に行き着いた。数学・物理を道具として、生体分子から生態系・社会まで手を広げ(すぎ)て、研究に取り組んでいる。

<実施の様子>

講師所感

仕事柄、高校生に大学紹介や模擬授業をすることはあるものの、大学以外で科学教室を実施するのは初めてで、手探りのスタートとなりました。私は理論系で、派手な実験パフォーマンスもできないため退屈でないか心配でしたが、少しでも面白いと思ってもらえたなら良かったです。手を動かしてみる課題にも予想以上にまじめに取り組んでもらえたのが印象的でした。
今回の内容は、大学で習う「統計力学」とつながっていて、私自身が大学院生の頃から進めている研究とも関係しています。今回は「手動」でシミュレーションしてみましたが、実際の研究ではコンピュータを使うと、何億倍も速くできます。まだこれから研究することがたくさんある分野ですので、興味のあるひとは大学で。  次回は実験もあるようですので、また楽しんでください。 冨樫祐一

初回ということで、ご用意した企画と、高校の先生や生徒の皆さんが期待する内容が一致しているのか、予定通り進められるか、など初歩的なところから不安に思いながら、まずはやってみるしかないと臨みました。
事前に、生徒会の方から先生にインタビューしたいということで、まずはそれから。4~5個の質問が用意されていたと思いますが、冨樫さんが高校生の意図をしっかり汲み取って丁寧に答えてくださった為、1~2年向けに公開する予定だったものですが「受験を控えた3年生にも聞いてほしい」と仰るほど、喜んでいただきました。
いよいよ本題はどうだったかというと、これまた生徒たちもワクワク、目を輝かせて話を聞き、PCによるシミュレーションを体感するワークショップでは驚きの結果に驚き、夢中で参加していました。
冨樫さんの丁寧な準備のおかげで、高校の教科書にある知識を問う投げかけがあったり、誰でもわかる身近な話があったり、最新の研究論文で使用した画像をみせてもらったり、なぜそれがすごく面白いのか、凄いのか、がしっかりわかるお話でしたので、やはり生徒たちが話に取り込まれていくのもうなずけます。
もちろん、質疑応答の時間もあったのですが、2時間の講義が終わった後にも、まだ足りずに冨樫さんと話したい人が残っていくつも質問していました。
雪谷高校の皆さん、冨樫さん、ありがとうございました! 宮原聖子

文責者:宮原聖子
※雪谷高校の関係者の許可をいただいて本記事を掲載しております。

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