東京都立雪谷高校での科学教室第6回

こんにちは。第3期理事の宮原です。
雪谷高校での科学教室を11月8日に実施しましたので、ご報告いたします。

企画概要

・趣旨:体験を通して、科学への興味関心を育み、理系科目の面白さに気づく時間を提供する
・開催頻度:約月1回
・実施場所:校内の理科室や近隣の施設
・講師:JAAS会員や協力いただける大学の先生/各回異なる講師にて実施
・内容:講師の専門かそれに近いところの内容で、かつ高校生が手を動かして楽しめる内容

第6回

実施日時:2025年11月8日(土)9:00~11:00

<タイトル>
新宿御苑植物観察会

<講師>
竹下 大学氏 品種ナビゲーター/育種家、技術士(農業部門)

●略歴
千葉大学園芸学部卒業後、キリンビールに入社。新規事業としてゼロから花の育種プログラムを立ち上げ、プロジェクト中止の決定を乗り越えて同社アグリバイオ事業随一の高収益ビジネスモデルを確立。2004年には、All-America Selectionsが北米の園芸産業発展に貢献した育種家に贈る「ブリーダーズカップ」の初代受賞者に、ただひとり選ばれた。独立後は、農作物・食文化・イノベーション・人材育成・健康の切り口から、様々な情報発信やコンサルティング等を行っている。

植物に救われた経験と育種家としての経験を活かし、「品種」「育種」「植物」「歴史」の切り口から新たな価値を多方面に提供中。著書に『日本の品種はすごい』『日本の果物はすごい』『野菜と果物 すごい品種図鑑』など。好きな言葉は「縦横無尽」「新機軸」「世界制覇」。栃木と東京の二拠点生活。 https://peraichi.com/landing_pages/view/takeshita/

担当講師所感

今回の科学教室では、フィールドに出て普段気づかない何かを感じ取ること、遠い過去の暮らしや文化を想像すること、そして生徒たちの潜在能力を引き出すことを意図しました。のどかで緑豊かな公園を散策しながら、農業技術の発展や歴史的背景について学ぶという非日常体験。知識としてではなく、体験を通じて科学と文化の接点を感じてもらいたいなと考えました。

生徒たちが何かに興味を引かれた瞬間、その表情が私にとって何よりものご褒美です。正解を求めるだけではなく、五感を使った体験を通じて探究心が自然に育まれていく。そんな過程を見守ることができ、とても楽しい時間となりました。この日の体験が、彼らの探究心を育む養分となり、今後の学びをさらに豊かにする一歩となることを心から願っています。

竹下大学


朝9時、新宿御苑の開門と同時に集合し、まもなく終了を迎える菊花壇展から見学を始めました。新宿門を入ると、すぐに大きな菊の花が飾られています。

キャプション:新宿門に飾られた菊と竹下さん

さて皆さんは、公園の入り口にある菊の花を見て、「きれいだな」「秋だな」と感じるほかに、どのようなことを思い浮かべるでしょうか。竹下さんは早速ここで足を止め、「これは一株で117輪の花をつけています」と、その技術について説明してくださいました。画像をご覧いただくとわかるように、真ん中に一本の茎が確かに伸びており、寄せ植えではないのです。

菊の花の育成が盛んになった江戸時代の話、新宿御苑が農業試験場だった明治時代の話、そして新宿御苑にゆかりの深い福羽逸人の話など、2時間にわたり公園を歩きながら、時には芝生でくつろぎつつお話を伺いました。

左:200を超える花を咲かせた聞くと参加者
中央:芝生の広場で江戸時代・明治時代の新宿御苑を学ぶ様子
右:時期をそろえて一斉に咲かせた大輪の菊

参加した生徒たちは、野鳥を双眼鏡で観察したり、木の幹に興味を持ってすぐにグーグルレンズで検索し種類を特定したりと、それぞれ自由に楽しんでいました。また、竹下さんが出すクイズに必死に頭を働かせる場面もありました。
  クイズの一例:「明治時代より前にあった、日本の食材とは何でしょう?」
新宿御苑はとても広く心地よい場所で、何も考えずに景色だけを楽しむこともできます。しかし歴史を知ることで、「なるほど、ここだけ芝生が絨毯のようにフカフカしているのは、もしかしてゴルフのグリーンだったのかな?」と想像力が掻き立てられ、散策がより一層味わい深いものになりました。
新宿生まれ・新宿育ちの竹下さんの言葉からは、新宿御苑に対する親しみや愛情がよく伝わってきました。竹下さんが仰った「科学の勉強というと最先端技術に目が行きがちですが、その最先端にも、今一般的に普及していることにも歴史があります。たまには目を向けてみるとよいと思います」という言葉が印象的でした。
長時間にわたるご案内を、本当にありがとうございました。

宮原聖子

左:渋谷川の源流  右:樹齢100年を超える歴史的な樹木ラクウショウとその気根

左:日本初の擬木の橋  右:すずかけの並木

文責者:宮原聖子