日本版AAAS設立準備委員会(日本版AAAS)では、社会的に関心の高い科学関連の案件について、研究コミュニティの「集合知の可視化」をミッションの一つに掲げています。このたび、リサーチWGでは試験的な試みとして、日本版AAASの賛同者・委員の方々に、新型コロナウイルス(新型コロナ)に関するアンケートを行いました。感染拡大の防止やワクチン接種に関する情報の普及に資することを目的とし、その結果を以下に公表いたします。
概要
日本版AAASの委員・賛同者809名にアンケート依頼のメールを送り、270件の有効回答を得ました。うち、博士号所持者は170名、博士号所持者以外は100名、医歯薬系も含む生命科学系を専門とするものは111名、それ以外を専門とするものは159名でした。
- オリンピック開催について
- 日本版AAASの委員、賛同者の間では、「開催するべきでない」とする人と、「開催してもよい」あるいは「条件づきで開催してもよい」とする人の割合が、それぞれ48% 、42%でした。博士号所持者とそれ以外、また医歯薬・生物系を専門とする人とそれ以外で、結果に目立った差はありませんでした。
- オリンピック開催に際して選択肢として提示されたそれぞれの項目に不安を有する人は6〜7割前後、どれか最低一つ以上を選択した人は94%と高い割合になりました。オリンピックが開催される場合、これらの不安ができるだけ解消されるような対策を検討し徹底していただくことと、それらを適切な広報により周知していただくことが期待されます。
- 新型コロナワクチン接種について
- すでに接種済みの人、接種するつもりの人をあわせると、90%を超える人が接種をすることとなります。これは、経済産業研究所(RIETI)による調査の結果の60%前後という値と比較するとたいへん高い値でした。
- RIETIの調査結果などで教育水準とワクチン接種意思の関連が報告されていたため、博士号の有無、専門分野が生命科学系か否かで集計を行ったところ、接種済みか接種するつもりである人の割合が、博士号所持者では約95%であるのに対して、博士号所持者以外で約82%であり、また、医歯薬・生物系専門の人では約95%であるのに対し、それ以外の専門では約86%でした。
- 新型コロナワクチンとその効果や副反応についての科学的知識をどの程度もっているかという意識については、博士号所持者は非所持者以外と比べ、また、生命科学の専門の人はそれ以外の専門の人と比べ、自己認識の上での知識の量が多いということがわかりました。
- 2.1〜2.3を考慮すると、博士号の有無や生命科学系の専門性、ワクチンに関する科学的知識量の自己認識と、新型コロナワクチンの接種を行う意思の有無にはポジティブな関係があることが示唆されました。
- 科学関係者の「集合知の可視化」について
- 得られた82件の意見のうち、57件がresearchmapを活用したアンケートによる「集合知の可視化」に好意的・積極的なコメントでした。設問のバイアスの危険性、「集合知」の限界などの指摘がある一方で、科学コミュニティの「集合知の可視化」を行うことには意義があると考える人が多いことがわかりました。
結果の報告書、アンケートの内容(資料1)、自由記述を含む回答(資料2)が、以下よりダウンロードできるようになっております。
・本アンケートは試験的な試みでフォーマルな研究としては行われておらず、本結果の解釈には注意が必要です。解釈の限界も含め詳細は、「新型コロナウイルス関連についてのアンケート結果(まとめ)」をご覧ください。
・「自由記述を含む回答(資料2)」を二次的に分析していただくことも可能です。二次的分析の結果を公表される場合は、こちらのページのURLを含めた出典を明示していただくようお願いいたします。
<出典記載例>
引間和浩・清原康介・片桐友二・宮川剛「分野横断的科学コミュニティでの新型コロナウイルス関連についてのアンケート結果」日本版 AAAS 設立準備委員会、2021年7月 https://jaas.group/survey-covid19/