■実施概要
日時:2024年2月13日(木)19:00~20:00
対象:テーマに興味にある方はどなたでも参加できます
定員:100名(先着順):オンライン
■アジェンダ
① 開始の挨拶、日本科学振興協会の活動とは(代表理事:北原秀治)
② 科学の信頼を高める公正性とは(研究環境WG:田中 智之)
③ 質疑応答
④ 終了の挨拶、告知
「もっとJAASを!」 は、JAASの多彩な活動をより多くの方に知っていただき、科学振興に関心のある仲間を増やすことを目的とした企画です。第2回となる今回は、「科学の信頼を高める公正性とは?」 をテーマに、研究環境改善ワーキンググループ(WG)の田中智之さん を講師に迎え、科学の信頼を支える「公正性」について深掘りしました。
科学への信頼と情報社会の課題
現代社会では、SNSを中心に情報が氾濫し、正しい情報が誤った情報やフェイクニュースに埋もれ、何が真実なのか見極めることが難しくなっています。特にコロナ禍では、科学的根拠に基づいた発信をしていた研究者が批判や攻撃の対象となる場面もありました。この問題は日本だけでなく、世界的な課題でもあります。そこでJAASは、世界的な学術出版企業 エルゼビア(Elsevier) と連携し、国際的な議論を展開しました。
Confidence in Research (Elsevier)
日本ではJAASという多様な人々が集うプラットフォームを活用し、研究者だけでなく、行政、経済界、メディア、科学コミュニケーターなど幅広い層と対話の場を設けました。これにより、ネットリテラシーの向上や、科学に基づいた議論のあり方が浮き彫りになりました。
研究公正とは— 科学の信頼を支える基盤
科学研究において、公正性は信頼の礎です。しかし、過去には研究不正の問題も存在し、研究の信頼性が揺らぐ出来事もありました。その背景には、研究者を取り巻く環境や、成果主義のプレッシャーなどが影響しています。
なぜ「研究公正」が必要なのか?
✔ 研究の質の向上
✔ 社会に貢献する研究成果の創出
✔ 科学への信頼の維持
近年では、「ポスト・トゥルース(Post-Truth)」時代と呼ばれ、陰謀論や科学否定論が拡散しやすくなっています。リー・マッキンタイア 氏も指摘するように、人は自らの信念に基づいて事実を歪める傾向があり、こうした風潮が科学の信頼を脅かしています。研究の公正性を守るためには、適切な評価制度の確立と、研究者が健全な環境で活動できる仕組みづくりが不可欠です。

ライフサイエンスにおける誠実さの概念を共有するための指針の構築
科学者と一般市民の対話が信頼を築く
研究公正の社会的な重要性を伝える取り組みとして、2023年10月に開催された「JAAS年次大会2023」 では、以下のようなテーマでシンポジウムが行われました。
「科学への信頼を育むには?」
「これからの研究評価を考える」
「ライフサイエンスにおける研究公正を考える」
このシンポジウムでは、研究者と一般の参加者がともに科学コミュニケーションの課題について考える機会となり、今後の方向性について議論しました。しかし、科学への信頼を築くには 一度の対話で終わるのではなく、継続的な交流が必要 です。
「異なるセクター間での情報格差の解消」
「一般市民と研究者の知識格差の理解」
「持続的な対話の場の創出」
JAAS年次大会2023「会いに行ける科学者フェス」では、こうした取り組みが積極的に行われています。



JAASと研究公正— 科学的態度を社会に広める
リー・マッキンタイア氏は、「科学的態度」として以下の2点を挙げています。
①経験的根拠(データ)を大切にする
②新たな根拠に照らして自分の理論を変える意思をもつ
これは、研究者だけでなく一般の人々にとっても重要な姿勢です。この科学的態度を広め、社会全体の信頼性を向上させることが、JAASの役割の一つ だと考えています。JAASの活動を通じて、研究者だけでなく、異なる分野の人々が出会い、科学を軸にした信頼関係を築くことができれば、それが科学への信頼へとつながるはずです。
今後も定期的にJAASの活動を発信していきます!
ぜひ多くの方にご参加いただき、一緒に科学と社会のつながりを深めていきましょう!
文責:北原秀治