イノベーションユースセカンドステージを実施、中高生がオンラインで発表しました

【開催概要】

日時:11月29日(土)、11月30日(日)
場所:Zoom Meeting

<参加者・タイトル>(発表順)

・興津美奏(明治学園高等学校) 「理科理解に向けた国語力を上げる授業の設計」
・菊地香羽(松本県ケ丘高等学校) 「商品の重要要素とは」
・藤本玲奈(都立雪谷高校) 「芸術で人の脳の処理を越えられるか」
・柴田心春 「ゴミにならないアクセサリー」
・新田和奏(福島県立磐城高等学校) 「多文化共生 日本人も外国人も暮らしやすい社会を作るには」
・小甲慈瑛(都立雪谷高等学校)、藤井梨子(都立雪谷高等学校) 「カサノリの体内時計メカニズムの解明による人間の時差ボケ改善」
・城井ひかり(敬愛高等学校) 「探究学習の存在意義」
・木村楓(麻布中学校)相原良美(佼成学園女子中学高等学校) 「生分解性プラスチックを使ったかご罠による人手のかからない効率的なアメリカザリガニの駆除によって、人口減少社会でも持続的な方法で生態系の回復を実現する方法の研究」
・浦上尚子(神戸大学附属中等教育学校) 「日本の学校教育において単元内自由進度学習を実践するハードルを下げるために効果的な取り組みとは」
・小野岡侑吾(福井県立藤島高等学校) 「モーリーの定理の三次元への拡張」
・ヴェチェレック美亜(三田国際科学学園中学校) 「未来の子供たちのためのハイクラス経済教育」

<アドバイザー>(50音順)
天野正樹((株)カネカ)
市川洋(海洋科学コミュニケータ)
大賀哲(九州大学/日本科学振興協会)
小沼良直(公益財団法人未来工学研究所/亜細亜大学)
KIWAMU(シンクタンク研究員)
酒井章子(香港浸会大学)
馬場基彰(横浜国立大学)
松浦茅南(広島大学/第1期第2期フェロー)
宮原聖子(たねまきめぶき/日本科学振興協会)
森田泰暢(福岡大学/福岡大学商学部シチズンサイエンス研究センター/一般社団法人ヒマラボ)
山中英治(ITエンジニア)

所感

11月29日(土)30日(日)にイノベーションユース season4(2025年度)のセカンドステージを行いました。今回のセカンドステージでは、フェロー(応募者)一人ひとりの問題意識や実体験に根ざした、幅広い研究テーマが発表され、研究テーマに取り組む様々な姿勢が共有されました。
今回は応募時点(9月)からあまり時間が経っていない中での中間発表ということもあり、研究の具体性や進捗には個人差が見られました。テーマの方向性が明確な参加者もいれば、問いの立て方や今後の進め方を模索している段階の参加者もおりました。しかし、このことはイノベーションユースの意義を損なうものではなく、「途中経過を持ち寄り、審査員からフィードバックを得る場」としてのセカンドステージらしい発表会となりました。とくに審査員からは、初めて発表を聞く第三者にも伝わるような背景説明や、問いをより自分事として掘り下げていく重要性、結論ありきではなく論理性や因果関係を丁寧に検討していく姿勢の大切さなど、多くの助言が寄せられました。
一方、探究学習が普及してきている中で、継続的なメンタリングやこのセカンドステージを通じて、いくつかの課題も見られるようになってきました。例えば、目に見える成果や進捗の早さが評価に繋がりやすい中で、長期的な視野から成長を応援する方法やそのあり方、また、大きな研究テーマに取り組むことと、それを小さな問いに分割して個々の検証・分析を進めていくことのバランスなど、とくに高校生の探究活動が現場の研究者を困惑・疲弊させているなどの議論もあります。[1]
しかし、こうした状況は、イノベーションユースの意義を否定するものではなく、むしろイノベーションユースの価値を何倍にも飛躍させるポテンシャルを持ったものだと考えることもできます。研究とは一問一答のクイズではありません。したがって、研究者に簡単にメールや電話で質問して得られることはほとんどないと思います。そこでわれわれは、一定の期間、研究者がメンターとなってフェローの研究を支援するという形をとっています。研究というのが、ある程度時間のかかるプロセスであり、検証過程を分けて1つずつ課題を克服していくという性質をとる以上このようなメンタリングを通じた研究支援はむしろ不可避のようにさえ思えます。とくに研究倫理の面で高校生の探究活動はどうしても甘くなる部分があります。イノベーションユースでは、高校現場では必ずしも対応が十分ではない研究倫理のサポートも含めてフェローを支援しています。[2]
3月のファイナルステージに向けて、フェロー一人ひとりがどのように研究を深化させていくのか、その成長のプロセスに引き続き伴走していきたいと考えています


[1]Yahoo!ニュース掲載「総合型選抜に有利だから?…高校の『探究学習』で大学の研究者たちが疲弊 話がかみ合わず『1人に10時間』かかったケースも」(AERA DIGITAL、2025年12月12日7:30配信、最終更新:同日11:00)。https://news.yahoo.co.jp/articles/778c3b5340a647494ea2d92f0b1c294b99924994


[2] 佐々木弥生「研究倫理の知識を得て、飛躍する生徒たち: 学校現場の実例から」(『Science Portal サイエンスクリップ』2025年5月13日掲載、2025年5月14日再掲)JSTサイエンスティーム 探究でつながる学びと科学 https://scienceteam.jst.go.jp/article/news/20250513_g01sp/

主催:イノベーションユース組織委員会・NPO法人日本科学振興協会(JAAS)
共催:九州大学アジア・オセアニア研究教育機構社会クラスター
協力:文部科学省 トビタテ!留学 Japan、政治社会学会

文責:大賀 哲