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趣旨
- 産休育休中などに科研費を使えないことが、研究者が産休育休などをとる妨げになっています
- これまで一部の研究機関でしか使えませんでしたが、最近、筑波大学でも使用可能になりました
- ルール整備を速やかに進めていくためには、各研究機関で職員・研究者・役員がお互いの立場を理解し協働していく必要があります
本オンラインイベントでは、筑波大学でルール整備を主導された古川太一さん(筑波大学 職員)、複数の研究機関でこの問題に取り組まれてきた山吉麻子さん(東京科学大学 教授)からお話を伺い、他の研究機関でも同様のルールを整備していくことを目指します。
ルール整備を望む研究者の方々だけでなく、各研究機関の職員・役員の方々、行政の方々なども、ぜひご参加ください。
筑波大学の通知文と申請書をここに掲載させていただく許可をいただいております。
・筑波大学における通知文
・筑波大学における申請書
イベント当日だけでなく、事前のご質問を以下のフォームにて受け付けております。当日ご都合つかない場合でも、遠慮なくご質問ください。
事前質問フォーム
参加申込は以下のPeatixからお願いいたします。
Peatix【越境トーク】産休育休中の科研費
科研費と産休育休の取得について
科学研究費助成事業(科研費)は、日本の大学などの研究機関に所属する多くの研究者が申請し交付を受けている研究費です。大正7年(1918年)に科学奨励金という名称で創設された100年以上の歴史のある研究費であり、現在は、文部科学省所管の独立行政法人である日本学術振興会が取りまとめをしています。
この科研費を産休育休中に使用できるかどうか、科研費の管理に責任を持つ研究機関ごとに、実は運用が異なっています。
科研費の交付を受けている研究者が産休育休中であったとしても、科研費を財源として定常的に人を雇用する必要があったり、学生などが研究をしていくために科研費の使用が必要であったりします。このような事情によって、産休育休中に科研費を使えないことが、研究者が産休育休をとることを妨げる要因になっています。
研究機関・行政・学協会によるこれまでの取り組み
産休育休中に科研費を使えない問題は、10年以上前から、各大学やさまざまな学協会で取り上げられてきました。日本遺伝学会男女共同参画委員会による2021年時点でのまとめでは、例えば、名古屋大学では使用可能ですが、多くの他の研究機関では使用できないことが報告されてきました。本オンラインイベントを主催するNPO法人日本科学振興協会(JAAS)では、2022年6月のキックオフミーティングでこの問題を話題に上げ、本法人の研究環境改善ワーキンググループなどで継続的に取り組んでいました。
科研費を担当する文部科学省 研究振興局 学術研究推進課の方に尋ねたところでは、その後、学術調査官という科研費の制度改善等に協力する現役の研究者の方から、本オンラインイベントに登壇いただく山吉麻子さんを紹介されて当時の状況を把握され、自主的な取組ばかりでは進まないと感じられたため、日本学術振興会の説明資料に以下の文言を入れていただくよう依頼されたとのことです。
【育児休業等取得中の科研費執行について】
○ 科研費ハンドブック(研究機関用)に記載のとおり、研究機関において、研究者が安心して出産し、育てられる研究環境を整備することは大変重要です。
○ 研究代表者等が、育休取得中などに、研究環境の維持・継続のために科研費の執行を希望する場合には、あらかじめ補助事業者の事務手続きの委任について明確とする等の対応を行ったうえで、科研費を執行いただくことが可能です(補助金の研究中断の場合は除く)。
○ 所属研究者の子育てと研究の両立が図られるよう研究機関において、ルールの整備等についてご協力をお願いします。また、今後、研究機関における優良事例の紹介なども検討していきますので、ご協力をよろしくお願いします。
日本学術振興会「科研費の適正な管理及び今後予定される制度改善等について 令和6(2024)年2月」ページ2より
このように2024年2月に、産休育休中の科研費使用が可能であると、行政によって明確に発信がなされました。
2024年10月には、筑波大学にて、産休育休中などでも科研費を使用できるようルールの整備がなされました。本オンラインイベントでは、このルール整備を主導された筑波大学の職員である古川太一さんにご登壇いただきます。
現在、文部科学省研究振興局学術研究推進課と日本学術振興会は、産休育休中も科研費を使用可能な研究機関での規程や申請書を一般化したものの作成を進めており、近日中に公表し、各研究機関に発信していく予定とのことです。その状況は、本ウェブページでも随時報告していきます。
また、各研究機関の状況は、男女共同参画学協会連絡会で全国調査を進めているとのことです。
本オンラインイベントが最初に目指すもの(第1の目標)
筑波大学でどのようにルール整備をされたのかを古川さんに、また他の研究機関での取り組みを山吉さんに紹介いただくことで、他の研究機関でもできるだけ速やかに、産休育休中などに科研費を使用できるようにすることが、本オンラインイベントが最初に達成を目指すこと(第1の目標)です。
文部科学省研究振興局学術研究推進課と日本学術振興会によるこれまでとこれからの取り組みのおかげで、ルール整備がこれから進んでいくことが期待されます。
ただし、ルール整備は各研究機関で行うことであり、それが速やかになされるかどうかは、そこでの研究者と職員、また役員の方々がこれからどう動くか次第です。それぞれが多忙である中、受益者(産休育休中の科研費使用を望む研究者)とその整備のために研究機関内の調整や文書の作成などをする人(職員)、また最終的に判断を下す人(役員)が、お互いの立場や忙しさを理解し、協働することによって速やかにルール整備が進んでいきます。
本件にご関心ある方は、古川さんと山吉さんからの当日の話題提供に先立って、上記の筑波大学での通知文と申請書やこれまでの経緯をご覧いただき、ご所属の研究機関でのルール整備をどのように進めていけばよいのか事前質問をぜひお送りください。当日、事前質問や当日の参加者からの質問に対して、古川さんや山吉さんから回答いただきます。もちろん、本オンラインイベントを待たず、各研究機関でのルール整備に着手していただいて結構です。
本オンラインイベント終了後、質問と回答を本ウェブページにまとめ、できる限り、それを見ただけで各研究機関でルール整備を進めていけるようにしていきます。さらに、相談窓口を設け、各研究機関でのルール整備の相談にものっていきます。
本オンラインイベントが次に目指すもの(第2の目標)
日本のすべての研究機関で産休育休中に科研費を使えるようにする取り組みを進めていくことによって、研究機関の研究者・職員・役員、また行政などが、それぞれお互いの考えや忙しさ、優先順位を理解し、異なる組織の人同士で相談して協力しあえる関係性をつくり、また同じ研究機関内の人同士で議論し協働していく事例をこれからさらに複数作っていくことを目指していきます。それによって、日本の研究機関において(ローカル)ルールの改善などをより円滑に行っていけるようにすることが、本オンラインイベントの第2の目標です。
さらに言えば、このような取り組みを通じて、学生なども含めた研究者・職員・役員など各研究機関内での対話と協働、教育・研究・産業に携わる方々も交えた日本のアカデミアでの対話と協働を活性化させ、各研究機関内やアカデミア内で解決すべき問題、行政や関連業界などと協力して解決すべき問題、国民に広く理解していただき立法府と協力して解決すべき問題などを区別し、垣根(境)を越えて対話・協働し、建設的により良い社会や構造を構築していくことが、本オンラインイベントを1つのアクションとして将来的に目指していきたいことです。
オンラインイベント参加申込
参加申込は以下のPeatixからお願いいたします。
Peatix【越境トーク】産休育休中の科研費
開催日時:2025年3月14日(金)12:00-13:00
オンライン開催
登壇者:古川太一(筑波大学 職員)、山吉麻子(東京科学大学 教授)
司会:くもM(サイエンスコミュニケーター)
企画責任者:馬場基彰(NPO法人 日本科学振興協会 理事)