多彩なポスターが目白押し! 科学との関わり方は千差万別 JAASキックオフミーティング振り返りシリーズ第7弾

暑さが少し和らいだかなと思ったのも束の間、厳しい暑さが続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。新たにブログ担当になりました椿です。

今回はJAASキックオフミーティング振り返りシリーズ第7弾として、オンサイトポスター発表のレポートをお届けします。

当日のポスター発表演題は、下記からご覧いただけます。

研究者にとってはなじみ深いポスター発表ですが、研究者だけでなく多種多様な方が参加するJAASのポスター発表は、一般的な学会とはだいぶ趣が異なります。

文系・理系のさまざまな分野の研究者が自身の研究成果を紹介する発表から、シチズンサイエンス、サイエンスコミュニケーションの実戦事例の紹介まで、多種多様な70枚のポスターが一堂に会しました。

幅広い分野のポスターが並ぶ、“JAASならでは”が詰まったポスター発表。その中で、ボランティアの学生さんたちが一番興味を持ったポスターとは?

3名の学生さんにレポートしていただきました。

OP64 『YouTube「ゆるふわ生物学」登録者3万人までの活動とこれからのサイエンスコミュニケーション』

黒木 健1,2, 三上 智之2,3, 栗原 沙織2, 宮本 通2,4, 迫野 貴大2,5, 田中 颯2

1東京大学大学院理学系研究科, 2ゆるふわ生物学, 3国立科学博物館, 4東京大学大学院理学系研究科附属植物園, 5東京大学大学院農学生命科学研究科

これからの未来を担っていく若い世代をターゲットに科学の楽しさ・面白さを伝えるうえで、YouTubeは今一番ホットで最適な手段だと思いました。

また、動画の内容を生物学のみに絞らず、ゲーム実況+生物学ネタといった構成の工夫をされていて、初めは科学に特別関心がなかった視聴者さんもいるのではないかと思いました。科目としての「理科」に興味がなくても、新しいことを知る楽しさは多くの人が持っていると思うので、今後も多くの人に愛され、さらに影響力のあるチャンネルになっていくのが楽しみです。

(横浜市立大学大学院医学研究科 井関 みひめ)

YouTubeチャンネル 『ゆるふわ生物学』はこちら↓↓↓

※本記事執筆担当の椿も8月13日に出演予定です。

ポスター発表を行う黒木さん。

OP4 『温室効果ガスの削減に向けた市民参加型研究「地球冷却微生物を探せ」』

青木裕一1,2, 大久保智司3, 戸田聡一郎4, 南澤究3

1東北大学 東北メディカル・メガバンク機構, 2東北大学 大学院情報科学研究科, 3東北大学 大学院生命科学研究科, 4東北大学 大学院文学研究科

私はポスターセッションの中で、『温室効果ガスの削減に向けた市民参加型研究「地球冷却微生物を探せ」』という発表が印象に残っています。この発表では、研究者と市民が連携して科学研究に取り組む「シチズンサイエンス」の力を感じました。

自然災害の激甚化・頻発化や生態系の破壊などを引き起こし、私たちの生活に大きな悪影響を及ぼしている地球温暖化は、社会全体で取り組むべき課題です。この地球温暖化の主な原因とされる温室効果ガスの代表としてCO2(二酸化炭素)が挙げられますが、N2O(一酸化窒素)という温室効果ガスをご存じでしょうか。N2OはCO2の約300倍もの温室効果を持つ気体で、主な発生源は私たちの身の回りにある「土」に生息する微生物だそうです。身近な土が温室効果ガスを排出しているという事実を知り驚きました。さらに不思議なことに、世界各地の土の中には「N2Oを吸収する土」も存在していて、これはN2O消去能力を持った微生物が活動しているからだと考えられているそうです。

このN2O消去微生物の発見は地球温暖化の抑制に繋がる可能性を秘めていますが、研究者だけでは日本中にある土を調べ尽くすことはできません。そこで、このプロジェクトでは、参加する人々が協働することで、多様な試料のデータを収集しています。それと同時に、分析結果を報告するセミナーやワークショップなどの対話の場を設けて、環境問題や微生物をもっと身近に感じてもらう取り組みも行なっているそうです。こうしたプロジェクトは研究者や市民の双方にメリットがあり、明るい未来を形づくるために重要なものだと感じます。

私もプロジェクトに参加し、地球環境や微生物についての興味や関心を深めつつ、環境問題などの解決へと積極的に貢献していきたいと思います。

また、ポスターセッション全体から身近に科学の可能性が溢れていることや多様な分野を知ることの楽しさに気づかされ、とてもわくわくしました。今後も研究者と市民が協働するシチズンサイエンスなどのコミュニティを通じて、分野・組織・職種・国籍・世代の垣根を超えた対話や協働の場が広がり、日本の科学がもっと元気になっていってほしいです。

(豊橋技術科学大学 越智雄大)

東北大学発の市民科学プロジェクト「地球冷却微生物を探せ」ウェブサイトはこちら↓↓↓

ポスター発表を行う青木さん。

OP26 『学術変革領域研究(A)「生涯学の創出―超高齢社会における発達・加齢観の刷新」 がめざす新しい超高齢社会』

月浦 崇 (京都大学大学院人間・環境学研究科, 学術変革領域研究(A)「生涯学」領域代表) 

“生涯学って何?” そんな単純な疑問からこのポスターを読んでみました。 

人間の生涯は,“生まれて、成長をして、歳を重ねれば衰退し、命を終える”。私を含め多くの人は、このような固定的な生涯観を持っていると思います。しかし,人生 100 年時代の到来を迎える日本において、何十年にもわたる高齢期をただ“衰えていくだけの期間”として、そんな単純な枠組みで捉えていいものなのか?という疑問が生まれます。そこで創出された研究領域が「生涯学」です。 

近年、医療・介護問題や高齢者の孤独死、リタイア後の生きがい不足などを耳にします。本来は長寿命化の実現は素晴らしいことであるはずなのに、現実的には課題や問題として捉えられています。しかし、高齢者には私たち若者にはない、長い人生の中で培ってきた豊かな知識や経験があり、その能力を 活かすことによって地域の担い手として活躍できるはずです。 

「生涯学」の進展により、“社会から支えられる者”ではなく“社会を支える者”として高齢者の活躍で きる環境を整備することは、未来の超高齢社会を明るいポジティブなものへと変換させることができる のではないでしょうか。 

「生涯学」という私にはなじみのない研究領域ではありましたが、実は私たちにとって非常に身近な問題であることがわかりました。このポスター発表は、超高齢社会における高齢者の在り方について考える良い機会となりました。

(豊橋技術科学大学 佐藤凌真)

学術変革領域研究(A)「生涯学の創出―超高齢社会における発達・加齢観の刷新」ウェブサイトはこちら↓↓↓

さまざまな人が協働するJAASらしいポスター会場

学会ではおなじみのポスター発表ですが、学会とは違い、JAASに参加するのは研究者だけではありません。

大型プロジェクトの研究成果発表からアウトリーチ実践事例の紹介まで、多種多様なポスターが並ぶ様子は壮観でした。学会でのポスター発表では、通常、似た分野のポスターが近くに配置されますが、JAASキックオフミーティングでは全く異なるジャンルのポスターが隣同士に並ぶことも。学会に行き慣れている人は少し戸惑ったかもしれませんが、普段はあまり話すことのない人同士の交流が自然と生まれる場になったと思います。立場の異なるさまざまな人が協働するJAASらしいポスター発表会場でした。

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