“科学の生態系”にエネルギーを!「10兆円規模の大学ファンド」等についての提言

2022年4月20日、日本版AAAS設立準備委員会および特定非営利活動法人 日本科学振興協会・研究環境改善ワーキンググループは、「10兆円規模の大学ファンド」と地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの使途についての提言を、関係諸閣僚と、3つの大学協会の会長宛に発出いたします。また、同日に科学技術担当大臣に提言の手交を行いました。

提言の要点

本提言では、10兆円ファンドの運用益ならびに地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの資金を、以下の4点の施策を通じて、世界と伍する研究大学が自然に次々と生まれてくる状態を作るために活用していただくことを提案しています。

  1. 日本の“科学の生態系”にエネルギーを!

少数の「研究大学」に対象を限定するのではなく、全国の個々の研究者が研究・教育に元気に集中できるようにすることを通じて日本の科学の生態系全体に活力をもたらす。

  1. 文部科学省の科学研究費補助金(科研費)の充実を!

研究者が安心して研究・教育に集中できるように、基盤的な科学研究費補助金の充実と安定化を実現する。

  1. 若手の育成は長期的なキャリアパスを俯瞰したものに!

若手研究者が、自己の将来を長期的に俯瞰することのできるキャリアパスを実現する。具体的には、大学コンソーシアムや資金配分機関などで博士の終身雇用を行い、全国の大学・企業などへ派遣し、派遣先の資金でその人件費を支出するような仕組みを導入する。また、大学院生・若手研究者の生活を支援するため日本学術振興会・特別研究員の枠を拡大・充実させる。

  1. 現場の研究関係者との対話を!

大学経営者層やシニア研究者のみならず若手・中堅も含めた現場の研究関係者と行政関係者の対話を行う場を設けていただく。

提言の詳細

本提言を作成するにあたり、まず1) 素案をインターネット上で公開し、2) その素案についてのアンケートを実施して広く研究関係者の意見を聴取し、3) その結果を議論し反映させたのちに最終版を確定させる、というユニークな方法をとりました。その結果、提言の本文は、研究関係者の多様な意見を反映するものとなっております。

詳細については、以下をご覧ください。それぞれの[URL] からダウンロードできるようになっております。

◯ 「10兆円規模の大学ファンド」と地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの使途についての提言(本文;PDF) 【URL】

◯ 資料1: 「10兆円規模の大学ファンドと、それに対する提言案についてのアンケート」の結果のまとめ(PDF) 【URL】

◯ 資料2: 資料2-1 10兆円規模の大学ファンドについてのアンケート質問(PDF) 【URL】

◯ 資料3: アンケート結果の生データ(エクセルファイル) 【URL】

◯ 資料4:10兆円の提言に関する代表理事の文書 【URL】

問い合わせ先

Email: info@jaas.science

担当:研究環境改善ワーキンググループ 宮川剛、三輪秀樹

用語解説

① 「10兆円規模の大学ファンド」と地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージとは

「10兆円規模の大学ファンド」と「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」については、政府の「総合科学技術・イノベーション会議」のサイトで資料が公開されています。また、「10兆円規模の大学ファンド」の基金については令和4年度予算で完成されます。今後、その運用益による支援対象となることが想定されている国際卓越研究大学などのあり方については、現在、国会において法案が審議されています。

  • 総合科学技術・イノベーション会議
  • 国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案
  • 同・本文
  • 財政制度等審議会 財政投融資分科会 説明資料

② “科学の生態系”とは

全国の大学・研究機関は、総体として一つの生態系を形成しています。トップ大学-地方/公立・私立大学間の学生・ポスドク・教員などの人材の流動性/頭脳循環、広く分厚い研究力の土壌に点在する異分野の尖った研究者たちによる共創、それらから生まれるダイナミックに変動する活力などが、トップ大学も含めた全体の生産性の維持・成長に欠かせません。

この記事を書いた人

日本科学振興協会(JAAS) 広報

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