JAASビジョン1.0策定 ー日本の科学をもっと元気にするにはー

(文責:ビジョンタスクチーム)

「JAASってどんな団体ですか?」
「JAASでは何をしようとしているのですか?」
「”日本の科学が元気”とはどういう状態ですか?」

こんな疑問を抱いた方、あるいは周囲にこんな質問を投げかけられた方は少なくないのではないでしょうか。

JAAS第1期理事会では、さまざまな人々との対話と協働のためには会の方向性を示す必要があると考え、ビジョンタスクチーム(以下、ビジョンTT)を設置しました。ビジョンTTは代表理事・副代表理事に公募メンバーを加えた8名で構成され、公開議論やアンケート調査などを通して幅広く意見を募りながら「ビジョン1.0」を取りまとめ、第1期理事会に提出しました。

「ビジョン1.0」概念図ベータ版

【ビジョン1.0】
 実現したい姿|Vision
   科学と人々が共にあり続ける世界

 果たすべき役割|Mission
   科学の健全な発展に貢献します
   科学を活発にする活動を推進します
   科学への期待に誠実に向き合います

 存在意義|Purpose
   JAASは、科学の楽しさや豊かさを共有し、
   あらゆる人々と対話し、協働するコミュニティです

 行動指針|Value
   多様な意見や考えを認め合い、
   開かれた場であることを大切にします
   多様性(Diversity)・衡平性(Equity)・包摂性(Inclusiveness)

 合言葉|Slogan
   日本の科学を、もっと元気に。

JAASにとって必要な「ビジョン」とは?

ビジョンTTでは検討にあたって、はじめにメンバー間で以下の基本的なスタンスを共有しました。

  • 本提案は、今後、会員による議論を促すための礎である
  • JAASが成長する過程でビジョンは見直しが図られていくことを前提とする
  • 主体はJAASに参加する科学者含む全ての人である
  • 皆で語れる共通言語を使うことを心がける
  • まずは日本の文脈の中からスタートする

次に考えたのは「策定すべきビジョンとはなにか」という点です。ビジョンと一口で言っても、人によってイメージが異なります。会の目標を示すべきか、理想の世界を描くべきか、表現は読み応えある文章がいいのか、短文がいいのか、斬新さは必要か、誰に向けたメッセージなのかなどなど、既存の団体や組織のビジョン等を眺めながら、JAASにとって必要なものは何かを議論しました。

その結果、

  • 「日本の科学をもっと元気に!」には多くの方が共感・賛同し、馴染みのある言葉となっていることから、このスローガンを生かすこと
  • より具体的に「何を目指し、何に対して、何を行うのか」を肉付けするために、ビジョン、ミッション、パーパス、バリューを加えること

という2点を条件に、

  • 実現したい未来の姿(ビジョン)
  • その未来を実現するために何をするのか(ミッション)
  • 私たちが何者で他の団体とどのように異なるのか(パーパス)
  • 何を大切にして行動するのか(バリュー)

の言語化を試みました。

「ビジョン1.0」に込めた思い

JAASには多様な考えや意見を持つメンバーが集い、Slackやオンライン会議では時に喧々諤々の議論が交わされています。ビジョンTTの議論の過程においても、多様な意見が出ましたが、常に互いの意見や考えを認め合い、価値観をすり合わせることを意識しながら検討を進めました。

設立趣意書にもあるように、分野、組織、職種・職階、国籍・民族、世代の垣根を越え、あらゆる人々が対話し協働して科学を振興していくには、長期的に実現したい姿を会員がゆるやかに共有して目線を揃えることが大切ですし、そういった活動だからこそ社会に対してよりインパクトをもたらすことができます。

ビジョンTTのミーティングはそんなJAASの掲げる世界観そのもので、実質的な活動期間は2カ月弱ながら極めて内容の濃い議論を重ねました。「ビジョン1.0」はできるだけ短文で誰にでもわかる表現を心掛けましたが、その言葉に込めた思いをここに補足させていただきます。

実現したい姿|Vision
 科学と人々が共にあり続ける世界

人々のくらしはいまや科学なくして語ることができません。身の回りのモノや情報は言うまでもなく、生活の知恵や工夫、社会の仕組みや制度に至るまで、何かしらの形で科学が関わっています。日常的にその存在を意識してもしなくても空気のように当たり前に存在し、人々に寄り添い、社会とくらしを豊かにし続ける――。科学がそんな存在であり続けることが、私たちの思い描く理想の未来像です。

果たすべき役割|Mission
 科学の健全な発展に貢献します
 科学を活発にする活動を推進します
 科学への期待に誠実に向き合います

科学と人々が共にあり続けるためには「科学が健全に発展すること」「科学が活発であること」「社会から科学に寄せられる期待に応えていくこと」が重要です。JAASではこれらを実現するために、上に掲げる3つの役割を果たすことを使命としています。

存在意義|Purpose
 JAASは、科学の楽しさや豊かさを共有し、
 あらゆる人々と対話し、協働するコミュニティです

JAASは科学振興への意欲があればどなたでも参加できる非営利活動法人です。科学振興を掲げるほかの組織や団体との違いは、研究者や科学を生業とする人々だけを対象にしていないこと。科学が元気であるためには、あらゆる人々との対話と協働の場が必要です。

行動指針|Value
 多様な意見や考えを認め合い、開かれた場であることを大切にします
 多様性(Diversity)・衡平性(Equity)・包摂性(Inclusiveness)

科学振興という志は同じでも、人それぞれに意見や考えは異なるもの。対話と協働においてはその違いを受け入れ、相互に認め合う姿勢が大切です。JAASではすべての活動が一部の人たちだけの閉じた場にならないように、誰もがそれぞれの状況に合わせて参加できる開かれた場づくりに努めます。

合言葉|Slogan
 日本の科学を、もっと元気に。

日本版AAAS設立準備委員会を発足して以来、私たちが大切にしてきたスローガンです。この言葉に共感し、趣旨に賛同してくださったみなさまと共に、これからもJAASは歩み続けます。

JAASの成長と共にビジョンも発展すべき

ビジョンTTでは「ビジョン1.0」がJAASの活動をする際の拠り処となることを意識しながら作成しました。ビジョンの後ろに「1.0」と付けたのはJAASの活動が広がっていくなかで、ビジョンを見直すときが来ると考えるからです。今回発表した「ビジョン1.0」はスタートに過ぎません。また新たなビジョンタスクチームが結成され、「ビジョン2.0」「ビジョン3.0」と発展していくことを期待しています。

最後に「ビジョン1.0」を策定するにあたって、意見交換会、公開議論、アンケート、Slack上など、会員であるかないかを問わず、多くの方々のご意見をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。すべてのみなさんが納得する文言にすることは非常に困難でしたが、できるだけみなさんのご意見に共通するところを探ったつもりです。

今後も、JAASに関わる方々が考え続け、よりよいビジョンを掲げ、JAASの活動が発展することを願っています。

この記事を書いた人

日本科学振興協会(JAAS) 広報

日本科学振興協会(JAAS) 広報