全ての人が科学を楽しむ場を作るために

(文責)JAAS・理事 森真由美

現実の多くの科学の場では、身体的なハードルを始めとして、何らかのハードルを感じる人が少なくありません。全ての人が参加可能である場を目指すJAASにとって、この現実は避けて通ることができないものです。では、ハードルを取り除いた場づくり・環境づくりは、どのようにして実現可能なのでしょうか。

JAASキックオフシンポジウムで考える

全ての人が異なる個性を持っている以上、それぞれの人が感じるハードルは、その場や個人の文脈に大きく依存します。

日本科学振興協会 第1回総会・キックオフミーティングでは、ハードルを取り除いた場の実現に必要な事柄について考えていくセッション(ワークショップ6、6月22日(水)15:00-17:00、オンライン)を行います。ハードルを克服するための場づくり・環境づくりや取り組みをされてきた方々の実践や経験を元に、特に今回は、視覚や聴覚に関わる、身体的なハードルに焦点を当てて考えます。

当日はUDトーク(※)を導入予定です。【トークに参加する

UDトークのURL

企画:下平剛司(国立研究開発法人)、並木重宏(東京大学)、森真由美(サイエンティフィックイラストレーター)

どんな実践・体験があるの?(発表要旨)

障害と科学/JAASでの取り組み:並木重宏(東京大学)

JAASのモデルとなっているアメリカ科学振興協会(AAAS)において、これまでに行われてきた障害者の参加を促す取り組みを踏まえたうえで、JAASでできること、やっていきたいことを提案してみたいと思います。AAASの活動として、障害と科学に関するリソースグループ、会議のアクセシビリティのモデルケースの提示、ロールモデルプロジェクト、就労支援のためのインターンシッププログラムについて取り上げたいと思います。またAAASに限定せず、障害者が科学に参加している世界の事例をご紹介したいと思います。

理科教育において視覚障害当事者が遭遇する困難について:久米良作(元小学校教諭/牡丹の会)

視覚がある人、無い人、両方の立場を知る元教師の体験談です。18年間教壇に立った経験から、小学校の理科の授業において、視力がないことで困る例を紹介します。また、新しい便利な機器や技術が登場しても、それらを使いこなすには視覚が必要というジレンマがあります。生活に密着した科学知識をどのように活かしているのか、日々の生活において視覚以外の感覚をどのように活用しているのかを紹介します。

聴こえる私が聴こえない学生と研究発表イベントを開くまで:青木優美(元つくば院生ネットワーク/株式会社しびっくぱわー)

ひょんなことから手話に興味を持った一介の大学院生だった私。所属していた学生団体が企画していた、学問の垣根を超えた研究発表イベント「みんなの学会」で、聴覚障害を持つ学生も発表してほしい、と思い立ったのが、ことの始まりでした。
手話ができるわけでもない、ろう文化に詳しいわけでもなかった私が感じた、「マジョリティの無知」と「科学の言語表現」についてお話しします。

視覚に障害のある子どもたちの科学を楽しむ場を作るために 〜科学へジャンプ地域版を通して〜:小林秀之(筑波大学人間系障害科学域/科学へジャンプ地域版運営委員長)、高村明良(全国高等学校長協会入試点訳事業部専務理事/科学へジャンプイン関東実行委員会委員長)、清和嘉子(筑波大学附属視覚特別支援学校教諭/科学へジャンプイン関東実行委員会事務局)

「科学へジャンプ」は、「目が見えなくても、あきらめることなく科学への夢をはぐくんで果敢に 挑戦して頂きたい」という趣旨の下、2008年に開始したプロジェクトです。この活動は、合宿型の「サマーキャンプ」と,日帰りのイベントとして開催される「地域版」、さらに「ITワークショップ」の3つの活動として展開されています。科学へジャンプ地域版は、低発生障害といわれる視覚に障害のある子どもたちが「集団で学習する」貴重な機会を提供し、特に通常学校に在籍する児童生徒にとっては、視覚に依存しない学び方を知る機会となっています。
 視覚に障害のある子どもたちにとっての科学の場に参加するハードルを考えると、そもそも科学の楽しさに触れる機会が少ないといったハードルと視覚に障害のない子どもたちと同じ教材、同じ指導方法で学ぶことが困難あるいは不可能であるというハードルが考えられます。本シンポジウムでは、視覚に障害のある子どもたちの「ハードルを取り除いた場づくり・環境づくり」という視点で「科学へジャンプ地域版」の取り組みを概観した後、実際に実施された算数・数学のワークショップを紹介します。

パネルディスカッション~そして

本来、科学は全ての人が等しく参加できる営みであり、また全ての人がその楽しみを享受することができるものです。しかし、現実の多くの科学の場では、身体的なハードルを始めとして、何らかのハードルを感じる人が少なくありません。パネルディスカッションでは、障害のある人が科学を楽しむためにはどうすればいいのかを話し合います。皆さんもいっしょに考えてみませんか?

オンライン期間(6月20日~24日)は、全てのオンラインイベントに無料で参加できます。ハイブリッド期間(6月18日・19日)の申し込みも、まだ間に合います。皆様ふるってご参加ください!

※UDトークは、コミュニケーションの「UD=ユニバーサルデザイン」を支援するためのアプリです。
無料版アプリのダウンロード先や接続方法・使い方は、webサイトで「UDトーク」を検索してください。

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